2011年 09月 29日
亡き父が残した唯一の「書評」 1983年5月発行の「死刑をなくす女の会」の会報に、父が以下のような書評を投稿した。その父は、1985年に亡くなったので、もちろん現状は知らない。 捜し物をしていたら、書類の間から出てきたものを、あらためて読んでみた。 『ジョンウェインはなぜ死んだか』は、父のようないわゆる一般人、市民運動家でもなければ、とくに何かを研究したりしていたわけでもない、ただの零細企業のおやじさんが、思わず書いたこともない「書評」を書いてみたくなるような内容だったのでしょう。 アメリカ西部劇の人気俳優ジョンウェインは、当時の日本人は誰でも知っているくらいの存在だったし、そのころ、彼が主演の西部劇はテレビでも盛んに放映されていた。 書評の最後に引用されている映画「渚にて」」は、1959年のアメリカ映画で、私たち家族は父に連れられて全員その映画を見に行った。小学生だったけれども、不思議なくらい、とってもはっきり覚えている。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 書評『ジョンウェインはなぜ死んだか』広瀬隆 (1982年・文藝春秋社) 森川一郎 文芸春秋社発行の『ジョンウェインはなぜ死んだか』という本を読みました。 書店で見た時は、ジョンウェインが癌で死んだことは新聞、雑誌、テレビ等で報道され、知っていたので、ことによると、アメリカのことだから、CIAか何か、国家機密とかで、消されでもしたのでは、なんても考えて買ってきた。 読んでみたら、やっぱり癌で死んだのである。しかし読むにつれて大変なことがわかって来た。著者、広瀬隆氏が、著名な映画俳優が次々と癌で死亡していることに不審をいだき、しらべた結果を書いたものだが、一読ののちは、この本は、ぜひ多ぜいの人に読んでもらいたいと思った。 ゲイリー・クーパー、トーマス・ミッチェル、スペンサー・トレイシー、ジョン・クロフォード、スティーブ・マックイーン、ジョン・ウェイン等々何十名もの著名な俳優達が、癌で死んでいる。 今から40年前の1943年頃、第1回の原爆実験がネバダの砂漠で行われた。以後何回も何回も核実験が行われて、周辺のユタ州、アリゾナ州は死の灰につつまれた。 ユタ州のソルトレイクシティや、セントジョージ等で、ロケをやっていた映画やさん達は俳優もエキストラもほとんどが発癌した。有名でもない俳優やエキストラは報道されないが相当数が死亡したのだろうと思う。 更に、ロケの撮りのこりを、セット内で撮るために、それとも知らずに死の灰で汚染された砂漠の砂を、トラック何十台もつらねて、ハリウッドに運んだ、そして、西部劇にあまり縁のない人達、ウェルトディズニーやハロルドロイド、ソニアへニー、イングリッド・バーグマン等々、何十人もの名優が癌で死んだ。 1960年頃ユタの砂漠でロケをした「征服者」では、参加スタッフ220名の内、100名以上が癌で死んだ。 死の灰は、映画関係者だけにふりかかるわけではもちろん無い。ソルトレイクシティでは、町中に癌の患者がいない家は一軒もない。家畜が500頭死んだ、羊が1500頭死んだ、子供が次々と白血病にかかってる、セントジョージで目の無い赤ちゃんが生まれた、ネバダでも目がない赤ちゃんが生まれた、汚れた雲が通ったあとで髪がごっそり抜け落ちた等々の異様な事件が続発した。 更に更に、第1回からの実験に参加した兵隊達が、あちらでも、こちらでも癌で病床にあったり死亡している。 死の灰の半減期は、プルトニューム239では24000年、セシウム137で30年、一度死の灰に汚染されたら完全に消えるまで何万年もかかる。この本にも書いてあるように、死の灰は長期性であり、且つ、年と共に濃縮されていく。 ジョンウェインが遺した言葉、「人を信じすぎると誕生日を繰り返して祝えなくなる」ジョンウェインは国家を信じすぎた為に長い歳月にわたって癌に苦しめられる自分を発見し、後悔の念を持っていたとに違いないと著者は言っている。 1957年、スタンリー・クレイマーが、映画「渚にて」を発表し、核兵器で死滅するアメリカの姿を描いた。 ──兄弟達よ、まだ時間はある──と書かれた幕が無人の街にはためくラストシーンは、私も印象に残っている。 日本では、原爆の実験はやっていない。しかし、原子力発電の危険性は重大問題である。99.9%安全であっても、0.1%の危険性も絶対に無視できない。しまったと思ったときは、もう遅い。とりかえしはつかない。 アリゾナ・ネバダ・ユタ、3州の中に、すっぽり入る程せまい日本に、次々と原子力発電所を作って良いものだろうか。クレイマーではないが、兄弟たちよ、まだ時間は、はたしてあるのだろうか。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
この国の政府は、0.1%の危険性を無視して、取り返しのつかない結果を作ってしまったのですよ。私たちは、この先ずーっと、放射性物質に汚染されながら生きていくしかないのですよ。 そう、時間はなかったのです。
by HomeMacro
| 2011-09-29 22:22
| 反戦・平和・自由
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